あじさいどうでしょう(ブログ) あじさいばなし

作り手の想いものせて

あじさいの国内有数の産地である群馬県片品村に、
農場の視察に訪れたのは昨年の7月はじめ。

 

東京では、すでに夏日が続く中、ここ片品村では、
まだ上着が手放せないほどの寒さ。
それもそのはず、ここは関東地方で唯一の
豪雪地帯というほどの高地にある。

 

農作物を育てる場所のことを、
圃場(ほじょう)というのだが、
この日は、標高が一番高い位置にある
生産者さんの圃場を、
農協の担当者が案内してくれた。

 

農協の古い軽自動車に乗りかえ、さらに山道を登る。
軽自動車ってこんなに早かったっけと思うほどの
スピードに思わず、足を踏ん張る。

 

胸の高さまで育ったあじさいが連なる、
ビニールハウスに到着する。

 

といっても、ビニールはまだ覆われておらず、骨組みだけ。
あじさいの花が咲いた後で、雨対策でビニールをかけるのだそうだ。
どうやら雨の重みで花が垂れると、市場価格が落ちるらしい。

 

生産者の須藤さんは、手慣れた感じで、タブレットを使いこなし、
昨年のデータを元に現在の生育状況を説明してくれた。
今時の農家さんのITを駆使するさまにも驚いたが、それ以上に、
一日単位で前年比の画像付きデータがあるという事実に、
花の生育にそこまでするのかとびっくりした。

 

2019年は、例年より日照時間も少なく、花の咲きが遅いらしい。
これからの作業工程について、データを元に、
天候や生育状況に応じて、新芽の間引きや枝切りを行い、
風雨であじさいが倒れないように、格子状にひもを張り巡らすなど、
花が出荷されるまで、絶え間なくあじさいの面倒を見るのだそうだ。

 

圃場を説明しながら、須藤さんが教えてくれた。
「あじさいは、比較的環境に強い植物だけれど、こうした観賞用の品種は、最初はなかなか咲かない。
それこそ、目の前のこの品種は、10年試行錯誤を繰り返して手をいれているけれど、まだ咲かない。
だから、最初の一歩は咲かせること。咲く品種は良いよね。」

 

実は、須藤さんの農園、この前年に県の大会で、
農林水産大臣賞を取るほどの素晴らしいあじさいを作っていた。
正直を言うと、今回、その秘密を聞きたかったのだが、
どうやら、狙って良いものが作れるわけではないらしい。
ひとつの花が咲くまでに、10年もの歳月をかけられる、
その姿勢こそが良い花を育てる秘訣なのかもしれない。

 

ただ、これほどまでに、手をかけても、収入は大卒の初任給程度。
とても家族は養えないため、兼業をされていると、こっそり教えてくれた須藤さん。
帰りがけに、お土産に頂いた自家製のトマトジュースがなんだか無性に重く感じた。

 

あじさいを含む切り花は、主に農協などの地域の集積所を通して、
都市部の花卉(かき)市場に送られる。
ここで、様々な花屋さんがセリを通して値段を決め購入していいくのだが、
今年は外出自粛のあおりを受けて、一番忙しいはずの母の日商戦のこの時期でも、
値段がつかない花も多いらしい。

 

海外の花卉市場では、売れ残った花を大量に廃棄して問題になったりもしたが、
日本ではまだ出荷地での生産調整をしているため、それほどのニュースになっていない。
とはいえ、調整といっても、自然のものをコントロールできるわけではないので、
生産者さんは、丹精込めて作った花たちを結局処分しなければならず、苦渋の決断をせまられているのが現状なのだ。

 

近所の生花店の前を通る時、須藤さんの坊主頭とくしゃくしゃの笑顔を思い出した。
その花たちの後ろには、たくさんの須藤さんがいるのだ。

 

小さなブーケを買った。数百円で買える、キッチンなどに飾るテーブルフラワーだ。
私がこの花を買ったからといって、花の業界がどうなるわけでもない。
一人の力なんて、微々たるものだ。

 

それでも、買わずにはいられなかった。
何かをせずには、いられなかった。

 

花自体にも癒しの効果はあるのだけれど、それ以前に、
これは花という商品ではなく「想い」なのだ。

 

須藤さんが、10年かけて向き合ってきた自然との戦いの証なのだ。
きっと多くの生産者さんは、そういう「想い」をもって、花を育て、世に送り出しているんじゃないだろうか。

 

それを見てしまったからには、知ってしまったからには、放っておくことはできなかった。
だって、ずるいよ、あんなに人懐っこくわらうんだもの、あの人。

 

須藤さんのあじさいを始めとする群馬県片品村のあじさいは、秋色あじさいと呼ばれる。
梅雨に咲くのではなく、秋口に咲くため、そして、まるで秋の紅葉のように、
赤や紫に色が変わることがその名の由来だ。そして、9月には店頭に並び始める。

 

このあじさい、実は乾燥させてドライフラワーにしても、秋色の色合いを長く楽しむことができる。
大きめの花瓶にそのまま挿すだけで、部屋が雑誌の一ページのようにオシャレになるし、
大胆に壁に吊り下げてみたり、バラバラにしてリースにしてもいい。

 

昨年、仕入れた須藤さんのあじさいが、まだ少し店にあるので、今年はこっそり楽しもうと思う。

 

もちろん、少しだけでしたら、ご用意できますので、須藤さんの笑顔を見たい方は、こっそりお問い合わせくださいね。

 

今日も最後まで
読んでいただき、
ありがとうございました!

 

〜あじさいやからのお知らせ〜

ごめんなさい!
もうすぐ母の日だと言うのに、
あじさいや、今年はあじさいの鉢植えを販売しておりません!

今年は、この世界的な自粛騒動の中、
私どものショールーム兼ミニ店舗も休業しており、
また、イベントや出張販売ができない状態の中、
止むを得ず、仕入れを断念いたしました。

楽しみにしていらっしゃたお客様、
大変申し訳ございません。
私も、非常に残念なのですが、
今年は、その分、ドライフラワーやプリザーブドフラワーの
キットなど、ハンドメイドが初めての方への新商品などを
中心に取り扱っております。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

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あじさいや

ドライフラワーをはじめとした様々なお花資材を扱う自然素材専門店。プリザーブドフラワーや花器、ハサミ等の副資材、そして生花も少し扱っています。フラワーデザイナーさんや、これから作家を目指す方が楽しく充実した仕事を行えるように応援するのが目標。ちなみに、あじさいが大好きなので、あじさいのラインナップはちょっと多めです。

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